91 貯水槽になった弁天池

91 貯水槽になった弁天池

  蔵敷の厳島神杜は、弁財天を祀ってあるところから「弁天様」と土地の人達は呼んでいます。弁天様から南に坂を下り青梅街道にぶつかる右角に、コンクリートの防火用貯水槽があります。



 この貯水槽は、かつて弁天池と呼ばれた十数坪の泥池でした。湧き水はかれることなく、南の陽ざしをうけた明るい池でした。鯉や亀もたくさんいました。
 昔、この弁天池のあたりで、山から出てきた大蛇に子供がのまれ、その子の着物のつけひぼ(つけひも)がなんと大蛇の口からたれ下っていたのです。
 大蛇はその場で捕えられ、神主さんのかりぎぬでくるみ、唐櫃(かろうど 棺)に入れ、大きな石のおさえ蓋をして神社の下にしっかりと埋めこんでしまったというお話でした。
 大正八年頃、青梅街道の道巾を広げた時に池の大きさはいくらか小さくなってしまいました。大正十四、五年には、池をコンクリートで四角に囲い、蓋をつけてしまいました。
 湧き水を利用した底なしの防火用貯水槽に変身してしまったのです。

  昔の弁天池の面影をしのべるものは何一つ残っていませんが、ただ一つどんな日照りの時でもかれることのない湧き水だけは、今も昔も変ることなく続いています。(東大和のよもやまばなしp198)





弁天池